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ブログtop > アーカイブ - 2012-09-

ライオンの子殺しの理由

雄ライオンとゾウ

「ライオンの子殺し」という言葉をご存知でしょうか。

 ライオン(Panthera leo)の繁殖は所謂ハーレム(ライオンでは『プライド』と呼ぶ)制で、通常1~2頭(最大で7頭)の成熟したオスを中心に2~18頭の大人のメス、若いオス、子供を含む約40頭の群れを形成しています。プライドの構成員が一箇所に固まることは稀で、通常小さなグループに分かれて行動しています。

 交尾をする権利があるのは当然大人のオスのみで、交尾以外のオスの仕事は挑戦者オスや他プライドのライオンやハイエナなどからのプライドの防衛、バッファローなどの大型の獲物を狩る場合の応援などです。良く知られるように普段は天敵も居らず、狩りもしないのでゴロゴロとしています。

 若いオスはある程度の年齢になるとプライドを出てゆき、武者修行の時代に入ります。このとき、通常血縁関係の数頭のグループで行動することになります。やがて充分に自信を付ける事が出来たオスは、いずれかのプライドのオスに挑戦することになります。挑戦者、王者ともに一頭とは限りません。従って数が少ないと不利になります。挑戦者としては味方が多いほうが戦いには有利ですが、プライドを乗っ取った後の旨みは当然薄くなるので、そこはジレンマとなります。

 見事挑戦者が勝利し、プライドを乗っ取った場合、まず最初に新王者がやることは、1歳未満の群れの子供を皆殺しにすることです。新王者の子殺しを母ライオンは必ずしも黙って受け入れるわけではなく、時には雄ライオンに必死の抵抗を試みたり、子供を見つからない場所に隠したりします。しかしながら母ライオンの抵抗が実を結ぶことは殆ど無く、場合によっては母子共に殺されてしまいます。

 野生動物の行動に人間の倫理観を当てはめることは無意味ですが、なぜこのような残酷なことをしなくてはならないのでしょうか?それには闘いに生きるライオンのオスならではの切実な理由があります。

 ライオンの雌は、通常二年に一度のペースで子供を産みます。そして子供が一歳半を過ぎるまではオスを受け入れることはありません。ですが子供が死んでしまうとすぐにオスを受け入れて懐妊します。オスは子供を殺さない限り、すぐに子作りをすることが出来ません。

 では次の発情期まで待つことが出来ないのでしょうか?それはできません。プライドを乗っ取ったらすぐに交尾をしなくてはならない理由、それは王座の保持期間です。通常プライドの王座の保持期間は二年未満、雄ライオンの全盛期は五歳から六歳、そして一度王座を陥落した雄ライオンが再びプライドの王に返り咲くケースは極めて稀です。すなわちオスはプライドを手に入れ次第、一分一秒でも早く子供を作り、自分の王座が陥落するまでの間に、子供たちに成長してもらわなくてはならないのです。自分の子供が「子殺し」の対象年齢を過ぎるまでは、まさに命懸けでプライドを守らなければなりません。そして王座返り咲きがほぼ不可能な以上、オスにとってプライドを奪取した瞬間のみがまさに一生に一度の繁殖のチャンスなのです。これが雄ライオンが前王者の子供を殺さなければならない理由です。

 王座を陥落したあとの雄ライオンの末路は哀れです。ある者は闘いで命を落とし、生き延びたとしてもその後の運命は非常に厳しいものがあります。立派なたてがみと筋骨隆々の肉体はハンティングに向かず、力が衰えるにつれ若雄ライオンの腕試しやハイエナの襲撃にさらされ、最後には力尽きて死んでゆきます。動物園では二十年以上生きる事もありますが、雄ライオンが野生で十年以上生きることは稀な事です。

 まさに闘う為に生まれてきたような雄ライオン、彼らの凄絶な生涯を思えば、ゴロゴロと寛いでいる彼らの顔も違って見えるのではないでしょうか。

この写真はこちらから購入できます。

カメラ: Pentax K-x
レンズ: FA77mm F1.8 Limited
絞り:  F8.0
露出時間: 1/800 sec
ISO感度: 400




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福井智一

Author:福井智一
ケニアにて野生生物保護の仕事をしていました。
日本においてもアフリカの野生動物を守る活動を続けていこうと考えています。
ケニア各地で撮影した写真を通じて、アフリカの大自然の魅力をお伝えします。
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