
キシテ海洋国立公園の珊瑚礁。生き物に詳しい人には常識かもしれませんが、サンゴは実は植物ではなくて動物です。クラゲやイソギンチャクと同じ、刺胞動物に含まれる、ポリプと呼ばれる数ミリの小さなイソギンチャク様の生き物がサンゴの本体です。このポリプが数万、数百万の巨大な群体を形成したものがサンゴです。サンゴは海水中の二酸化炭素をカルシウム塩として固定し、石灰岩の骨格を作ります。珊瑚礁というのは、サンゴの骨格が数百万年かかって作り出した、石灰岩の構造体のことです。
一般に海洋は、陸の森林や草原に比べ生産量(面積当たりの生き物を養えるエネルギーの量、すなわち光合成量)が、遥かに少ないのですが、珊瑚礁は海洋としては例外的に熱帯雨林に匹敵するほどの生産量を誇ります。圧倒的な生産量と、様々な形のサンゴが生み出す多様な環境が、色とりどりの様々な生き物が暮らすことを可能にしています。

しかし不思議ではありませんか?珊瑚礁はもちろんサンゴに覆われています。海草・海藻も生えてはいますが、まばらです。しかし上述したようにサンゴは動物なので、光合成はできません。透明度の高い水は、水中の植物プランクトンの量がとても少ないことを示しています。では一体誰が熱帯雨林にも匹敵するという珊瑚礁のエネルギー生産を担っているのでしょうか?
答えはサンゴの体の中にあります。珊瑚礁を形成する造礁サンゴは、ポリプの中に褐虫藻と呼ばれる小さな藻類(植物)を共生させています。この褐虫藻が光合成を行い、エネルギーの一部をサンゴに分け与えています。一方でサンゴは褐虫藻に栄養塩類(肥料分)や二酸化炭素を供給しています。褐虫藻は十分な日の光と潤沢に供給される栄養塩類のおかげで、非常に高効率で光合成を行うことが出来るのです。また、褐虫藻が共生しているのはサンゴだけではありません。クマノミが共生していることで有名な大型のイソギンチャクや、「ビーナスの誕生」で有名な巨大なシャコガイの外套膜にも褐虫藻が共生し、珊瑚礁の生態系を底辺から支えています。珊瑚礁は無数の生き物が互いに支えあうことによって、他に類を見ない複雑で豊かな生態系を形作っているのです。
アフリカ雑貨・写真集など
![]() にほんブログ村 | ![]() 動物写真 ブログランキングへ |
- 関連記事
-
- 珊瑚礁の恵み
- キシテ海洋国立公園の珊瑚礁
- モンバサ海洋国立公園のブダイ